皆さんは腕時計のデザインに個性は求めますか?
様々なブランドの腕時計に精通した愛好家であれば、他の方が着用する腕時計がどのモデルか判別がつくことも多いでしょう。
しかし、腕時計に詳しくない方、というか、世間一般の大多数の方は他人の腕時計にそれほど興味もないし、いわんやモデル名やスペックなど知る由もないでしょう。
卑近な例ですが、私の知人たちも腕時計に興味のない方々は、ダイバーズウォッチなどはどれも同じに見えるようです。
しかし、そんな十把一絡げに腕時計を見る世間の目にも、ひねりの効いたデザインを持つ腕時計は「個性的」「おしゃれ」な腕時計に見えるもの。
腕時計趣味は自己満足できれば十分かもしれませんが、自分の愛機が他の方にも魅力的に映るのは、決して嫌な気持ちにはならないのではないでしょうか。
そんな、個性的で魅力的ななデザインの腕時計を数多く輩出する腕時計ブランドが日本には存在します。
その名は「オリエントスター」。
今回は、オリエントスターよりブランドのヘリテージモデルのリバイバル版、「 ダイバー1964 2ndエディション 」の試着レビューをお届けしたいと思います。
- 人と被りにくい腕時計がいい
- ちょっとひねりの効いたデザインが好き
- 無骨なだけでない洗練さも併せ持つダイバーズウォッチが好き
- 上っ面だけでなくしっかりした品質も求めたい
上記のような皆さんには刺さる腕時計だと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
レトロさ漂わす品の良いデザイン
1964年誕生の「カレンダー オート オリエント」のリバイバル
ダイバー1964 2ndエディション は、その名の通り1964年に発表されたオリエントの2作目のダイバーズウォッチ、「カレンダーオート オリエント」を現代の技術でリバイバルした作品です。
(カレンダーオートオリエントの写真などは公式HPでご覧になれます。)
アルマイトリングを組み込んだベゼル、ドットインデックスと6・9時位置のバーインデックスの組み合わせ、ロリポップ秒針・時針。
これらはオリジナルのカレンダーオートオリエントから踏襲したデザインとなっています。
現代の腕時計でありながらどこか昔懐かしいレトロな感じがするのは、このオリジナルのカレンダーオート オリエントのデザインコードを忠実に再現したが故でしょう。
”古き良き時代”の雰囲気が好きな方にはグッとくるものがあるのではないでしょうか?
かくゆう私はその一人です。
端正な品の良さを携えた没個性的なデザイン
パッとこの腕時計を見た瞬間、ダイバーズウォッチにありがちな無骨感はあまり感じません。
むしろ、なんとなくエレガントな雰囲気を感じる腕時計です。
その要因の一つが柔和なケースデザインでしょう。
全体的にケースが丸っこい印象なのです。
この丸みは、ラグが細いことでケース円周がなだらかな曲線を描いてブレスレットに繋がっていくためでしょう。
トゲトゲしさやゴツっとした感じはしません。
また、ラグが細いだけでなく長めにデザインされている点も、上品な見た目を作ることに一役買っています。
丸みがあってもずんぐりむっくりした感じではなく、シュッとメリハリを感じるのです。
ブレスレットへ繋がるラグ終端に面取りとポリッシュが施されているのも、立体感と高級感を感じるスパイスの効いたポイントだと思います。
このモデルを特徴的なものとしているもう一つのポイントは、12時位置に配されたパワーリザーブインジケーター。
腕時計がしっかり駆動しているか一目でわかる機能的な側面はもちろん、デザイン上もダイアルにアクセントを与えています。
パワーリザーブインジケーターはオリジナルのカレンダーオートにはない機構で、本モデルの大きな特徴と言えるでしょう。
ブレスレットはダイバーズやツールウォッチに多い3連ブレスタイプではなく、5連ブレスに見えるデザイン。”見える”というのは、本当にコマが5つに分かれているわけではなく、実質は3連コマなためです。
ただし、裏返してブレスレットを見ない限り分かりません。3連の方が堅牢性は上がるので、ダイバーズウォッチにはよりふさわしいと言えるのではないでしょうか。また、コスト面でもメリットがあるので、リーズナブルな価格で提供するには必要十分以上のクオリティを持ったブレスレットだと思います。
文字盤はというと、ブラックはオリジナルモデルを継承する「ミラーブラック」。ダイバーズウォッチの定番とも言えるマットな文字盤とは異なり、ドレッシーな艶やかさを持った文字盤です。
また、グリーンの方は、岩手県岩泉町にある日本の三大鍾乳洞の一つ「龍泉洞」内の地底湖の色合いをモチーフにした、グラデーションの効いた美しい文字盤。エメラルドグリーンのような、青みを少し感じる独特な色彩が唯一無二の存在感がありますね。
HPの写真などではもっと濃いグリーンのダイアルかと思っていましたが、現物はもう少し全体的に明るい色合いでした。
回転ベゼルも深いグリーンです。
ブラックもグリーンも、決して奇を衒ったデザインやギミックはありません。
ただ、”普通の”ダイバーズウォッチとは明らかに違う雰囲気を醸し出す、そんな不思議な魅力のある腕時計だと感じます。
ツールウォッチ然とした着用感
着用感はというと、どっしりした腕時計です。
フルコマのブレスレットモデルで175g。腕に着けた瞬間にしっかりと腕時計の重みを感じ、堅牢なツールウォッチとしての信頼感が高まります。
また、厚みも14.5mmとそこそこあります。
特に回転ベゼルが分厚いなと感じました。3mm程度はあるのではないでしょうか。
ラグからラグの縦の長さも49.6mmあるので、腕に乗せた際の見た目もボリュームを感じます。
正直、このどっしり感は好みが分かれる点だと思います。
特に厚みに関しては、日常生活ではぶつけるリスクが上がったりと何かと不便さも感じてしまうので、購入を検討される方はしっかりとご自身で着用感を確かめてみてください。スーツなどワイシャツを着用する際は、腕とシャツの間にある程度余裕がないと収まりきらない厚みだと思います。
一方、重厚感を楽しめるユーザーの方には、ダイバー1964 2ndエディションは信頼のおけるパートナーとして、しっかりと腕の上で存在感を与えてくれるはずです。ラグも腕に沿うように傾斜がついているので、着用感自体は良好です。
プロユースに耐えうるスペック
ダイバーズウォッチとしてのスペックは、がっつりプロユースに対応しており全く申し分ないレベル。
国際工業規格のISO6425に準拠した正真正銘のプロダイバーズウォッチです。
逆回転防止ベゼルを有し、防水性能は200m潜水用防水。
ブレスレットにはしっかりとダイバーズエクステンション機能が付いており、ダイビング時にはウェットスーツの上からも着用可能です。
精度は日差+25秒〜-15秒、パワーリザーブ50時間。
ケース・ブレスレットは耐食性に優れるSUS316Lのステンレススチール。替えのシリコンバンド付きです。
メーカー定価で税込約15万円の値段設定を考えると、十分すぎるスペックを有する腕時計ですね。
こんな方におすすめ
日常生活に馴染む”ほど良い”個性を求めるダイバーズウォッチファンには、本モデルは琴線に触れるものがあるのではないでしょうか?
奇を衒った短絡的な差別化というのは、得てして安っぽさを感じてしまうもの。
ですが、押さえるべきポイントは押さえつつ、随所にスパイスを効かせた独創的な雰囲気を持つダイバー1964 2ndエディションは、安直な差別化とは一線を画す芯の通った個性を感じられると思います。
チャラけた印象もないので、プライベートはもちろんビジネスの場でも違和感なく着用することもできるでしょう。
他のダイバーズウォッチとは一味違う独特の雰囲気があるので、腕時計のことを聞かれて会話が弾むなんてこともあるかもしれません。
デザイン上の個性だけでなく、そのスペックはプロユースに耐えうる折り紙付きの高品質なので、見た目も品質も両方を求めるユーザーにとって十分に検討に値するモデルだと思います。
比較検討するとしたら?
ダイバー1964 2ndエディションを購入検討するにあたって、他にどんな候補が挙がるか考えてみました。
条件は以下で2モデル選んでみました。
比較検討条件
- 国産の腕時計である
- プロユースに耐えうるスペックのダイバーズ
- ブランドの歴史を感じられるモデル
- 定価15万円前後
セイコー SBDC101
まずはセイコーのSBDC101。
1965年に発表されたセイコーの初代メカニカルダイバーズウオッチのデザインを踏襲し、現代的にブラッシュアップされたモデル。ダイバー1964 2ndエディションと同じく、ブランドの初代ダイバーズのリバイバル版であるSBDC101は、国産ダイバーズウォッチのヘリテージとして背景ストーリーはバッチリの逸品かと思います。
スペックは、200m潜水防水、日差+25秒~-15秒、内面無反射コーティングのサファイヤクリスタル風防など、ダイバー1964 2ndエディションと同スペックの部分も多いです。
パワーリザーブはSBDC101の方が長く約70時間。
サイズは厚さ:13.2mm、横:40.5mm、縦:47.6mmと。横径こそほぼ変わりませんが、ダイバー1964 2ndエディションより縦や厚みはコンパクトに収まっています。
メーカー定価は159,500 円(税込)です。
シチズン メカニカルダイバー200m(Ref:NB6021-68L)
シチズンのプロマスターシリーズより、メカニカルダイバー200mのブラック文字盤を選びました。
このモデルは、通称「フジツボダイバー」とも呼ばれるユニークなストーリーを持ったモデル。
時は1983年。オーストラリアのロングリーフビーチにて、フジツボに覆われた状態で発見されたダイバーズウォッチがありました。その腕時計がシチズンの「チャレンジダイバー」と呼ばれるモデル。フジツボの付着状況から、長期に渡り海中を漂っていたと目された時計でしたが、なんと発見時になお駆動し続けており世界を驚愕させました。
NB6021-68Lは、その「チャレンジダイバー」のデザインを継承しつつ、外装とムーブメントを現代的にアップデートしたモデルです。
ケース径はダイバー1964 2ndエディションと同じく、41mm。厚みは12.3mmとダイバー1964 2ndエディションと比べ薄くなっています。
防水性能はダイバー1964 2ndエディションと同じく、ISO6425に準拠する200m潜水用防水。
ケース素材がスーパーチタニウムのため非常に軽量で、フルコマでも重さはなんと108g。
(スーパーチタニウムは、シチズン独自のチタニウム加工技術と表面硬化技術(デュラテクト)を施した素材)
パワーリザーブこそ42時間ですが、耐磁2種を備えた非常に高い耐磁性、精度もダイバー1964やセイコーSBDC101より高く平均⽇差−10〜+20秒。
カラーはブラック・ブルーに新たに加わったオールブラックの3色展開ですが、ブルーおよびオールブラックはスーパーチタニウムのブレスレット、ブラックはシリコンバンドでの展開となります。
個人的には歴史に忠実なブラックか、現代的なブルーが好み。
新しいオールブラックのモデルは、少々このモデルの持つヘリテージ感とは異なるベクトルに振れている気がします。
メーカー定価は、ブラック:税込107,800円、ブルー:税込132,000円、オールブラック:税込170,500円となります。
素材がスーパーチタニウムのため非常に軽く装着感は良かった。
まとめ
ダイバー1964 2ndエディションは、日本を代表する腕時計ブランドであるオリエントの初期ダイバーズウォッチを現代の技術で蘇らせた、ブランドのヘリテージモデル。
他のモデルにも通ずる個性的なデザインはこのモデルにも現れており、決して奇抜ではないにも関わらず一目でダイバー1964とわかるユニークさを持っています。
他の人と被りにくいデザインがお好きな方にとっては、非常に魅力的なモデルになると思っています。
特にグリーンモデルに関しては、スイスブランドなども含めて他社モデルにはない色味のグリーンで、唯一無二な魅力を持っていると思います。
セイコーやシチズンの二大巨頭の影に隠れがちですが、他にはないユニークなデザインと質実剛健な品質を両立させ、それを良心的な価格設定で勝負をするオリエントスター・オリエントが私は大好きです。
ぜひこのモデルも多くの人がお手に取って、その魅力を体感されれればなと思っています。
まとめ
- 1964年発表のオリエントのダイバーズウォッチ「カレンダーオート オリエント」のリバイバル版
- 柔和でスタイリッシュな特徴を持ち、無骨さの抑えられた品のあるデザイン
- 一方で、装着感はツールウォッチらしいどっしりした重厚感を持つ
- スペックはISO準拠のプロユースのダイバーズウォッチ。防水性能は200m潜水防水。
- 個性的だが度を超えた奇抜さはなく、日常生活に馴染む”ほど良い”個性を与えてくれる。
- 価格は税込約15万円とスペックや仕上げを考えると非常に良心的な価格設定。
- 個性とともに品質も妥協したくない方には一見の価値ありのモデル