チューダーのブラックベイ54を購入してから1年3ヶ月ほど経ちました。
2023年のWatches & Wondersで初めてこのモデルが発表され、PCの画面で初めてその姿を見て心踊った瞬間は忘れもしません。
まさに「衝動」。
そのままの勢いで購入してから早1年強。自分の手持ちコレクションの中でも最も頻度高く使用する腕時計になっています。
今日は、ブラックベイ54を1年以上使ってみた振り返りができればと思います。
購入前とのギャップはあるのか、実際のところ使用感はどうなのか、などお伝えできればと思います。
サイズ感について
ブラックベイ54の一番の特徴といえば、発表当時から巷を騒がせた37mm径のケースサイズではないでしょうか。
ダイバーズウォッチは、その名の通りダイビングでの使用を想定された腕時計ですので、過酷な水中作業に耐えうる防水性、耐衝撃性、視認性を確保する堅牢な作りが必要となります。そのため、その用途に見合うスペックを満たすには、必然的にケースは大きくならざるを得ないものです。
そうしたガツンとインパクトのある大きさ、頑強さにロマンを感じる人が多いので、常に人気を集める腕時計ジャンルでもあります。
ただ、その重厚な腕時計を一般的な日常生活で使用するとなると、少々オーバースペックであり、使用シーンによってはミスマッチになることは否めません。腕時計は趣味性の高いものなので、服装などに厳格なルールがない職場だったり休日の私服で使うなら、もちろん自身のお気に入りを使うことを揶揄する人もいないでしょう。ファッションの一部ですので、自己満足で構わないと思います。
ですが、私個人としては、身なりは自分のためだけでなく、第三者に与える・与えたい印象も含めてコーディネートしていくものという考え方を持っています。特に30代半ばを超えてからは、より一層そのことを意識するようにしています。なので、例えばワイシャツの袖に収まり切らずに、手首の上で存在感を放ちまくるデカ厚のダイバーズウォッチなどはビジネスの場では基本的に避けるようにしています。手持ちの時計だと、オメガのプラネットオーシャンなんかはほとんどビジネスの場では使わないですね。(ちなみに43.5mm径、厚み17mm)
でも、やっぱり、ダイバーズを付けたい気持ちもある・・笑
タフな使用ができるダイバーズって、細かいこと気にせずにガシガシ使えるので日常使いにもってこいなんですよね。
そんな二律相反する気持ちに答えてくれるのが、ブラックベイ54の小振りなサイズ。
37mm径って絶妙に使いやすいんです。購入前の想像以上に使いやすい。
ケース径もさることながら、厚みも11.24mmと薄いのも◎。
ワイシャツの袖にも難なく収まるし、不意に何かにぶつけたり引っ掛かることも非常に少なくストレスフリーです。
このサイズ感は私の日常には非常に使い勝手が良く、ヘビーユースするポイントですね。
控えめなデザインが"ちょうど良い"
サイズ感とともに使いやすいと感じるのが、控えめなデザイン。
ダイバーズウォッチはツールウォッチなので、操作性を高める工夫が随所に盛り込まれています。
例えば、回転ベゼルは水中でも掴みやすいよう、ベゼルに凹凸が施されていますが、この凹凸が大きいと見た目はゴツく、アグレッシブな印象が強くなります。
また、潜水時間を計測する回転ベゼル上の目盛りやリューズガードなども、場合によってはガチャガチャした見た目になりがちです。
そうしたダイバーズの荒々しさ、ゴツさが、ブラックベイ54 にはあまりないんですよね。
回転ベゼルも薄く、コインエッジの凹凸も目立たないので、ラフな印象にはなりません。また、ベゼル上の目盛も分ごとの目盛はなく、5分ごとにラインと数字だけの非常にシンプルなデザインで、ミニマルにまとまっています。
リューズガードもなく、リューズ自体も小さく目立たないので、落ち着いた印象を与えてくれます。
1954年のチューダーの初代ダイバーズウォッチのデザインを踏襲されたブラックベイ54。当時のデザイン特徴は、視認性や操作性など実用面から見れば技術的に未発達の要素にはなるでしょう。しかし、海に潜るわけでもない私のような人間が、日常使いするにはこれくらいでちょうど良いですね。
それでも防水性能は200メートルもあるので、突然のゲリラ豪雨だろうが台風だろうが臆することなく使えます。
ダイアルのデザインも秀逸だなと思います。
針やインデックスはギルト加工でゴールド色が使われており、夜光塗料も少しクリームがかった色。全体的に温かみありヴィンテージ感溢れる配色です。
ミニマルなデザインの中に、ダイアルのゴールド色が差し色になり、ブラックベイ54 に他の腕時計にはない個性を与えているのと感じます。
これがもし、白い夜光にシルバー色の針やインデックスであったら、おそらくただの地味な時計で終わってしまったでしょう。
シンプルさは時に無機質な冷たさを感じさせますが、ブラックベイ54 にはこのダイアルの温かみが良いアクセントになっていると感じます。
あと、もう一つ気に入っている点が、ダイアルカラー。
表記上のダイアルカラーはブラックで、チューダーのHPに掲載されている画像のダイアルを見ても、普通にブラック文字盤に見えるのですが、実物を見るとうっすらブラウンがかった色味に見えるんです。
回転ベゼルの黒の色合いと比べるとよくわかります。
おそらくインデックスや針に施されたギルト加工のゴールド色が、ダイアル上に反射して茶色がかった色味に見えるのだと思います。この茶色っぽく見えるブラックダイアルが、まるで長い年月を経ることで日に焼けて少し変色したような、そんな情緒的な味わいを与えてくれるのです。
ノンデイトな点も使いやすいし、大好きなポイント。
左右対称なデザインになるのも個人的には好みだし、時刻調整する際も日付を合わせずに使うことができるのは時短にもなって使いやすいです。
仕上げのさじ加減
また、仕上げの美しさのさじ加減も使いやすいポイント。
腕時計正面はサテン仕上げでツールウォッチ然とした面持ちですが、ケースエッジや側面にはポリッシュ仕上げが施されており、時折見せるきらめきに高級感を感じることができます。この控えめながら幾ばくかの輝きを持つデザインが、ツールウォッチの持つカジュアル感を抑えてくれ、ワイシャツなどを着る場面でも全体の雰囲気を損なうことなく馴染んでくれます。
このサイドのポリッシュって、実は自分が見るよりも第三者から見られることの方が多いと思うのですよね。なので、このサイドのポリッシュ具合やケースエッジの仕上げがきっちり仕上げられていると、”いい時計”の印象を持たれやすいのではないかなと思ったりします。
まぁ、別に人にいい時計してると思われたいわけではないのですが、ある程度オトナになってくると、あまり安っぽい感じに見られるのもどうかと思うので、嫌味なギラつき感なく、さりげなく高級感を醸し出してくれるブラックベイ54 はちょうど良いんですよね。
また、仕上げではないですが、T-fitクラスプの微調整機能はめちゃくちゃ便利。
夏場の汗ばむ時やお酒を飲んで手首が少し浮腫む時など、3秒くらいでブレスレットの長さを微調整でき、常に快適な装着感で腕時計を楽しめます。
とにもかくにも汎用性高し
時計が主役にならず、そっと寄り添い華を添えるデザイン。
それでいて、70時間のパワーリザーブを備えたCOSC認証の高精度ムーブメントを積んでおり、防水性能も200m。きっちり実用性能も押さえられています。
この控えめで奥ゆかしいデザインと、信頼に足る実用性のの高さから来る汎用性の高さが、このブラックベイ54の使いやすさの根幹かもしれません。
そして、37mmサイズは男性に限らず女性の腕時計愛好家にも刺さるサイズかと思います。
女性向けの腕時計の多くは、華やかさや可愛らしい繊細なデザインの腕時計が多いですよね。ことさらダイバーズウォッチとなると、サイズ的に女性がつけるには大きすぎるものも多いのも事実。
しかし、世の中には腕時計に”可愛い”を求めていない女性も実は一定数いらっしゃると思います。卑近な例だと、私の妻はそのタイプで、腕がもっと太ければロレックスのサブマリーナを着けてみたいとか言ってます。
そういったフェミニン感を腕時計に求めない女性にも、このブラックベイ54は候補の一つにしても良いかもしれません。
総じて、男女問わず汎用性の高い ブラックベイ54 。
使い始める前から予想はしていましたが、実際に使い始めるとその使い勝手の良さは想像以上でした。
サイズ的にもデザイン的にも、年齢を重ねても違和感なくつけられると思っています。今の自前のコレクションで一本だけ残すなら、この子になるかもしれません。
ただし、華やかなファッションやモードな雰囲気のファッション、現代的なスポーティな服装などにはあまりマッチしないかもしれません。
幸い私はそういうファッションの好みではないので、公私ともに使用シーンは多いです。
また、悲しいかな、ブラックベイ54 を使い始めてから、新しく腕時計を買おうという気持ちが少し薄れた気がしています。
候補を見つけても、ブラックベイ54 がある中で自分はどれだけその時計を使うか?、そう自問自答すると54を超える存在がなかなか他にありません。
価格的なことを考えても、54以上の価格がする時計だとより一層厳しい目で見てしまっています。
要は、私にとっては全体的にこれといった欠点がなく、満足してしまっている状態なんだと思います。
衝動買いは得てして失敗すると思われがちですが、その衝動こそ実は本当に自分の心が望むものだったりするのかもしれません。
私は普段、コスパだったり使用頻度から一回使用あたりの金額はいくらだ?などと、あれこれチマチマ考えながら買い物をするような慎重タイプの人間です。ですが、そんな人間こそ、理性を吹っ飛ばす渇望を感じるものに出会ったら、迷わず手に取った方が良いのかも。なーんて、腕時計の枠を超えてお金の使い方にまで思考を巡らせる機会をくれたのは想定外の驚きでしたね。
ブラックベイ54 で己の足るを知る、そんな心境の今日この頃です。
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