1924年に初めて「SEIKO」ブランドの腕時計が発売され、2024年はセイコーのブランド100周年となる年。
その目前に迫る100周年を祝して、11月から怒涛の新作ラッシュが続いています。
今回は100周年を記念して発売された新作のうち、セイコーを代表するクロノグラフ、「 スピードタイマー 」の機械式自動巻モデルの新作をレビューしたいと思います!
・セイコーの腕時計が好き
・70年代のデザイン、ビンテージ感あるものが好き
・日常使いにちょうど良いクロノグラフを探している
・限定ものに目がない
こんな皆さんのご参考になれば幸いです。
70年代の雰囲気を感じるデザイン
デザインモチーフは1972年発売のCal6138
スピードタイマー メカニカルクロノグラフ の新作、SBEC021とSBEC023は、1972年に発売されたCal 6138搭載のクロノグラフをデザインモチーフとしています。オリジナルモデルは、縦2眼でパンダ配色、ラグは短めで、ラグからなだらかに続く流線型のケース形状、オレンジのクロノ針と多連のメタルブレスなどが特徴のデザインでした。
これまでもスピードタイマーシリーズは機械式、ソーラー電池式とラインナップがありますが、今回12月8日に発売された新作のスピードタイマーは、オリジナルの意匠をより色濃く反映されており、従来版とは異なる魅力を持つ作品になっています。
ケース、外観
まず、従来のスピードタイマー メカニカルクロノグラフと比較し、ケース形状が大きく変わりました。
72年発売のモデルをモチーフにしているだけあり、全体的にレトロなビンテージ感を感じるデザインです。
丸みを帯びた短いラグ、そこからケースにつながっていくラインが流線的で美しい。そこはかとないエレガンスすら感じます。
プロスペックスというと、プロユースにも耐えうるツールウォッチとしての無骨さが魅力ですが、最近のプロスペックスの新作を見ていると、機能面にプラスして審美性や高級感も高められていっていますね。SBEJ009を試着した際もそう感じました。
ケースは、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げの使い分けにより、立体感ある仕上がり。よく見てみると、ラグの上面には同心円状のヘアライン仕上げが施されています。
クロノグラフを操作するプッシャーボタンは、大ぶりなハンマー型。リューズも大きく操作性が良さそうです。
ブレスレットは、サテン仕上げとポリッシュ仕上げが交互に使われた、クラシカルな9連ブレスレット。このブレスレットの形状も、ツールウォッチのイメージの強いプロスペックスではあまり類を見ないブレスレットではないでしょうか。
私の祖父がこのタイプのブレスレットの腕時計を使用していた記憶があるので(モデルなどは不明)、個人的には若干のジジくささを禁じ得ないのですが、それがまた今の時代では逆に新鮮ですね。もちろん、加工技術は現代の方が格段に進歩しているので、工作精度の良さと高級感ある見た目は、当時のそれを大きく上回っています。古き良きデザインと現代技術の両方を楽しめるので一挙両得ですね。
新しい スピードタイマー のダイアルカラーは2色
新しいスピードタイマーのダイアルカラーは2色展開。
レギュラーモデルは、シルバーのメインダイアルにブラックのサブダイアル。100周年限定モデルは、ブルーグレーのメインダイアルにシルバーのサブダイアルとなっています。
ダイアル
色味については、写真だとお店の照明の具合もあり、肉眼で見た印象を伝えるのがなかなか難しいですが、レギュラーモデルも限定モデルも色味が良い意味で”パリッ”っとしておらずどこか柔らかい印象を与える色使いです。
特に、限定モデルのブルーグレーは、ぱっと見はほとんど黒にしか見えないのですが、黒ほどコントラストが強くないので腕時計の持つレトロな雰囲気によくマッチした絶妙な色だと感じました。
また、ダイアル外周のタキメーター、その内側に白いミニッツマーカー、中心にシルバーもしくはブルーグレーと分かれていますが、色使いだけでなくダイアルに奥行きも生み出し、デザイン上もメリハリがつくとともに視認性も高まっています。
オリジナルの1972年発売のクロノグラフは縦目のダイアルデザインでしたが、新作は三つ目。配置は、3時位置がスモールセコンド、6時位置が12時間積算計、9時位置が30分積算計となっています。
クロノグラフ秒針と30分積算計の針の先端はオレンジ色が使われ、視認性の向上とともにデザイン上もアクセントになっています。
デイト表示も4時・5時の間に控えめに配されており、色味も文字盤に合わせた配色なので悪目立ちせず、全体的にスッキリまとまっています。クロノグラフは表示が多いので、ともするとゴチャついた印象を与えてしまいがちですが、スピードタイマーの新作にはゴチャつき感は感じませんでした。
装着感良く、日常使いのクロノグラフとして◎
スピードタイマー新作のケースサイズは、直径42mm、ラグからラグの縦49.5mm、厚さ14.6ミリ。クロノグラフとしては比較的ケースサイズは抑えられている方ですが、しっかりとした存在感を腕に感じることと思います。
個人的には厚みがやや気になりましたね・・
17mm超の厚さのオメガ プラネットオーシャンを所有しており、厚みには慣れてはいるものの、体感的にはプラネットオーシャンと同じくらいの”がっつり腕に乗ってる感”を感じました。
ただ、ケース重心が低く、ブレスレットにも適度に重みがあるので、重量バランスは良好。腕時計にかかる遠心力によって、腕が振られるような感覚は少ないと思われます。
ブレスレットのコマの動きも滑らかで、快適に腕にフィットしてくれます。
厚みは細腕の私には少々気になる点ではありますが、デザイン的にはクセも少なく、王道のクロノグラフで文句なくカッコいいです。また、高級感ある仕上げながら、文字盤の醸し出すレトロ感によって嫌味のあるギラギラ感はありません。そのため、ビジネスからカジュアルまで比較的幅広いシーンで使える使い勝手の良さがありそうです。
ムーブメント・スペック
スピードタイマー 新作のムーブメントはキャリバー8R48。
このムーブメントは精度や堅牢性で定評がある機械式自動巻きムーブメント。2万8800振動/時で駆動、ダイヤル側に垂直クラッチとコラムホイールを採用したものとなります。
精度は日差+25秒~-15秒で、駆動時間は約45時間。
その他のスペック概要は以下の通り。
主なスペック
・ケース材質:ステンレスケース
・コーティング:ダイヤシールドケース
・ガラス材質:デュアルカーブサファイア
・ガラスコーティング:内面無反射コーティング
・ルミブライト:あり(針・インデックス)
・中留:ワンプッシュ三つ折れ方式
・防水:日常生活用強化防水(10気圧)
・重さ:183.0g
・価格:レギュラーモデル SBEC021・・・税込352,000円
100周年モデル SBEC023・・・税込385,000 円 (世界限定:1,000本 うち国内:150本)
なお、100周年記念モデルのSBEC023は、ケース裏に「LIMITED EDITION」の表記とシリアルナンバー付き。また、カーフレザーの替えストラップも付属しています。
セイコーのHPでレザーストラップの画像が見れますが、レザーストラップの方もなかなかデザインが渋く、ステンレスブレスとはまた違った少しワイルドな雰囲気がカッコいいです。
もう一歩欲しいところ
デザイン良し、仕上げの高級感ありでとてもハンサムなモデルですが、個人的にはもう一歩突き詰めて欲しかった点もいくつか・・
まずはパワーリザーブ。45時間というのは少々短いかなと。スイスの良心的な価格帯ブランドであるTissotのPRXクロノグラフなどは、約10万円ほどスピードタイマー新作より安価ですが、パワーリザーブは60時間あります。
また、100周年記念モデルのSBEC023については、替えのレザーストラップが付属するので、せっかくならクイックチェンジ機能があればユーザーの利便性は格段に上がったでしょう。
あとは、先述の通り厚みが少々気になるので、個人的にはあと2mmほど薄くして13mmを切るケース厚であれば尚良しでした。
スピードタイマー 新作 まとめ
スピードタイマー メカニカルクロノグラフの新作は、1972年発売の往年の名作をデザインモチーフにしたセイコーの意欲作。ツールウォッチとして不動の地位と人気を確立している「プロスペックス」シリーズですが、本作はツールウォッチとしてだけではない、エレガンスさや高級感も感じることのできる作品です。
やや厚みやパワーリザーブの短さなどは気になるものの、カッコよさは折り紙付き。サイズ感も42mmとクロノグラフとして大きすぎることもなく、スッキリまとまったダイアルデザインと嫌味のない高級感から、大人の普段使いのクロノグラフにもってこいの逸品だと感じました。
公式HPの製品画像だと、製品の本当のカッコよさが半減してしまっています。特に限定モデルのブルーグレーの色味は肉眼で見た方が、絶対に良いです。実物の渋い色味は一見の価値ありかと!
ぜひ実機を実際に目で見てみてください。めちゃくちゃカッコ良いですよ!